会社設立における資本金の見せ金は違法?デメリットを解説

2024.05.23

 1.見せ金とは

 「見せ金」とは、会社設立時に実際には存在しない資本金を一時的に準備し、銀行に預けているかのように見せかける行為を指します。これにより、会社の資本力を誇張し、銀行や取引先に対して信用を得ることを目的としています。見せ金は、実際には借りたお金や他の手段で一時的に用意されたものなので、会社の本来の財政状況を反映しません。

 

2.預け合いとは

 「預け合い」とは、見せ金の一形態で、複数の会社や個人が互いに資金を預け合い、一時的に資本金を増やして見せる手法です。例えば、A社がB社に資金を貸し付け、B社がその資金を利用して資本金を増やすというような操作が行われます。これにより、各社が実際よりも高い資本力を持っているように見せかけることができますが、これは実質的な財務状況の改善を伴わないため、違法行為に該当します。

 

3.会社設立の際の見せ金は違法

 会社設立時に見せ金を利用することは違法です。会社法に基づき、発起人は実際に出資の履行をしなければならず、見せ金を使用することは出資の履行を仮装する行為にあたります。これにより、会社設立そのものが無効になる可能性があり、発起人や役員は法的責任を問われることになります。

 

出資の履行を仮装した場合の発起人・役員の責任(会社法第52条の2)
会社法第52条の2は、出資の履行を仮装した場合の発起人および役員の責任について規定しています。具体的には、発起人や役員が出資の履行を偽装した場合、刑事責任を追及されることがあり、公正証書原本不実記載罪に問われることもあります。
ある判例では、見せ金を利用して資本金を偽装した会社の発起人が逮捕され、刑事罰を受けた事例があります。このような行為は、単に会社設立が無効になるだけでなく、関与した個人の社会的信用も失墜し、今後の経営に大きな悪影響を及ぼします。

 

4.会社設立時に見せ金を利用すると起こるリスク

 見せ金を利用することで生じるリスクは多岐にわたります。

融資が受けられなくなる

 見せ金を利用していることが発覚すると、金融機関からの融資が受けられなくなります。銀行やその他の金融機関は、企業の資本力や信用力を重視しており、見せ金を利用している企業には信頼性が欠けると判断されます。

見せ金が課税される

 見せ金として一時的に用意した資金が課税対象となることがあります。税務当局が見せ金を不正な手段と見なすと、追加の課税措置が取られ、企業にとって大きな負担となります。

会社設立が無効になる

 見せ金を利用して会社設立を行った場合、その設立自体が無効とされることがあります。会社法に基づき、正当な手続きが踏まれていない会社は、設立が無効となり、法的に存在しないものとみなされます。

会社に実際にお金があるわけではない

 見せ金は実際には存在しない資金であるため、会社に実際の資金がない状態が続きます。これにより、運転資金や事業拡大のための資金調達が困難となり、会社経営が立ち行かなくなるリスクがあります。

金融機関や取引先からの信用を失う

 見せ金が発覚すると、金融機関や取引先からの信用を失うことになります。一度失った信用を取り戻すことは非常に難しく、今後のビジネス展開に大きな障害となります。

5.見せ金にならない資本金

 見せ金を利用せずに正当な方法で資本金を用意する方法はいくつかあります。

株・不動産・債券などを売却する

 自社が保有する株式や不動産、債券などの資産を売却することで、正当な資本金を用意することができます。これにより、見せ金を利用することなく、必要な資金を確保できます。

親族からの出資は、借りるのではなく貰えないか交渉する

 親族からの資金提供を受ける際には、借りるのではなく出資として提供してもらうように交渉することが重要です。これにより、見せ金ではなく正当な資本金として扱うことができます。

クラウドファンディング

 クラウドファンディングを利用して、広く資金を募る方法も有効です。インターネットを通じて多くの投資家から資金を集めることができ、見せ金を利用する必要がありません。

6.まとめ

 会社設立において見せ金を利用することは違法であり、多くのリスクを伴います。見せ金を利用することで、法的責任を問われるだけでなく、信用を失い、会社経営に深刻な影響を及ぼします。正当な方法で資本金を用意することが、健全な会社経営の基盤となります。適切な資金調達を行うことで、持続可能なビジネスを展開していくことが重要です。

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